Flow of ask

ほぼ日常に関することや愚痴を中心に、趣味などを。更新は月一がいいほうです。

入ノ章_世界革命団

前にあげた設定と序章の続きです









「AF、世界革命団に入らない?」



レイはAFに勧誘を迫った。
誰もがこの勧誘を断ると思ったいたのだが、AFは快く頷いた。予想外の展開に凌央は驚き、レオは飲んでいたお茶を吹き出した。
誘ったレイ本人も驚いていたがすぐに顔が綻び、AFに抱きついた。
丁度その時だった。玄関がガラリと音を立てて開いて、次には「ただいま」という二つの声が聞こえた。
その声にレオが反応して玄関へと向かい、凌央も続いて部屋を後にする。
一方レイに抱きつかれているAFは誰が来たのかを思う反面、恐怖心を抱いていた。
そんな中、部屋に二人の男女が入ってきた。
女の子は男の子の後ろに隠れながらAFを見つめ、男の子はAFを珍しそうな眼差しを向けている。


「レイ、この子は誰ですか?」
「お帰り勇気、結子!この子は新しい団員のAFくんだよ、可愛いでしょう?」


じゃーん、と声で効果音を作ってレイはAFを二人の男女に見せた。
まじまじと見つめる二人をよそにAFは顔をこわばらせている(見た感じは無表情)。
すると男の子から自己紹介をしだした。
男の子の名前は桝田勇気で女の子の名前は中川結子。二人は葉栗姉弟と幼なじみ。
二人も世界革命団の団員で、勇気がNo.04、結子がNo.05らしい。
そしてAFとの唯一の共通点が輝石という物質が体内に宿っているということ。
【輝石】は特殊な鉱石で、持っているだけで異端な力を使うことができる。体に宿している場合は力を制御できるため膨大な力を使うことができるのだ。
生まれつき輝石を持っている子は将来、膨大な支配者となるという伝説があるようだ。
勇気と結子は自分の輝石の【能力】をAFに見せる。
勇気は【足に関する能力】を、結子は【言霊を操る能力】を彼に説明した。


「AFも【輝石】を持っているのですから、おそらく能力を使えるはずなのですが……」
「……左目だから、目に関係する能力……【千里眼】とか?」
「どうなんだろうね。まあ、今日はとりあえずAFの歓迎パーティーだよ!」


レイがそういった刹那、居なくなったはずの凌央が「そんな金ねぇよ」とツッコミを入れた。


夜中、AFはふと目を覚まし起き上がった。
すぐに部屋がようできなかったため彼は凌央の部屋で寝かせてもらうことになった。服は小さい勇気から貸してもらっているのだがやはり大きすぎるようで。
AFは静かに部屋を後にして裏庭の渡り廊下にやって来た。
月明かりで明るい裏庭は夜中のために静まり返り、虫の音が響いている。とても心地よい。
彼は縁側に座って月を眺め始めた。今日は満月、綺麗な月が顔をのぞかせている。
そして彼は思い吹ける。
今日のあったこと。レイとレオに見つかって、凌央とも出会い、勇気と結子にも出会ってそれに世界革命団に入団して。
疲れたが楽しかった、彼はそう思えて自然と笑みがこぼれた。
その時だった。左目からバチバチ、と音がしたかと思えば青い電流が彼の体を包み込んだ。突然のことで何がなんだかわからない。彼は急に左目の激痛に悲鳴を上げた。
悲鳴は家中に響き渡り、すぐさま凌央たちが駆けつけてくれた。
だが、その間にも電流は強くなりAFを守るように体にまとわりついており、他の電流はあたりを攻撃し始めていた。


「【電撃を操る能力】……それも青い電流なんて、初めて見ました……」
「それより、AFを助けないと!」


感心する勇気のみぞおちを殴り気絶させるとレイは彼に近づこうとした。
しかし電流がそれを許さない。電流はAFに近づこうとしたレイを攻撃して、レイを軽く吹き飛ばした。
飛ばされたレイをレオがうまくキャッチし、AFから遠ざかる。
混乱しているAFは左目からくる激痛に未だ悲鳴を上げている。


「……お前ら、そこで待機してろ」
「え、あ、凌央兄!?」


凌央がAFに近づき、それにレオが驚く。
相変わらず電流は凄まじい勢いでバチバチと音を立てている。そして凌央が一歩、AFに近づいた刹那に電撃を喰らわせた。
だが凌央は少し顔を歪める程度で、どんどんAFに近づく。
電撃のせいで腕や頬にやけどを負っても、彼は混乱してしまっているAFに近づいて、抱きしめた。
抱きついた刹那、今までにないくらいの勢いで電流が辺りを包み込んだ。


「あ゛、あぁあぁああ゛あ゛あぁ゛あぁあ」
「ッ……AF、落ち着け……ッ、アクターッ」


凌央がアクターと言った瞬間、電流の流れが途切れた。
今まで光が消えた瞳をしていたAFがゆっくりと凌央を見た。そしてだんだんと瞳に光が戻っていく。
完全に光が戻ったと同時に、光っていた左目の機械も青色から黄色にもどった。
凌央の頬や腕の火傷を見てAFは目尻に涙を溜め始め、終いには泣き出してしまった。
泣き出したAFに避難していた四人が近づいて慰める。
怪我をした凌央は苦笑いしながら、このあとの後始末のことを考えていた。









朝になり、AFは起き上がった。
あのあと彼は泣きつかれて寝てしまったのだ。
記憶をたどりに彼は凌央やレイに大変なことをしてしまったのを思い出して慌てて一階に降りる。
昨日の記憶をたどってリビングにくると、そこには凌央ともう一人の男の子がいた。
顔に紙が貼ってあり、髪の色は紫色で何故か服が入院服の少年。


「おはよう、AF」
「お、おはよう……ごめんなさい、昨日……」
「気にすんなよ、俺らは気にしてないし。な?」


凌央の優しい言葉にAFは頷いた。
すると紫色の髪の少年が、AFの方を向いた。なんだろうと、AFは首をかしげる。
何も言わないその少年の代わりに凌央が話し始めた。
紫色の髪の少年の名前は崎守あきらといい、この近くの総合病院の隔離病棟に入院している患者である。
時折病棟を抜け出して他の世界革命団の団員に会いに来ているらしい。
あきらは幼い頃の事故により両目の視力を失い、盲目になってしまった。その際にその団員と出会って人生が変わったらしい。
でも、彼は世界革命団の一員ではない。
AFが理由を聞くと、今度はあきらの方から話してくれた。


「俺、目が見えないから……迷惑になるし足でまといになる。だから入らないんだ」
「……そう、なの」
「アレックスさんから聞いたよ、君は新しい団員さんなんだってね。よろしくね、小さな団員さん」


あきらは笑みを浮かべた(と思われる)。
数分話していると、あきらは病棟に帰っていってしまった。
毎日ではないが時折来るというのでAFは次会うときはもっと話をしてみたいと思った。
二人であきらを見送り終わったとき、急に二階からドタバタと足音が激しく聞こえ始めた。
その音にAFは二階へと続く階段を見上げ、凌央は深いため息をついた。すると二階の階段を飛び越えたレイが朝の挨拶とともにAFに飛びついた。
もちろん、彼らはそのまま床に寝転がる形になったのだが。


「レイ、この階段何段あると思ってんだよ」
「え?20段ぐらい?」
「んなこと聞いてねえよ、飛び降りるなって言ってんだよ」


怪我するだろうが、というと彼女は何かに感激したのか顔を手で隠す。
「凌央兄マジ紳士」などとボヤいている彼女を無視して、レオと勇気と結子がおはよーと階段を下りてきた。
皆、いつもの服でどこかに出かけるようだ。
AFはどこに行くのかと尋ねると、皆口を揃えて学校と答えた。
みんな揃って朝ごはんを平らげると、レイとレオがAFを洗面所に連れて行き、彼の顔を洗ったりしてくれた。
皆準備を整え終えると、全員で家を出る。そして一行は山の中にある廃校へとたどり着いた。
話によれば、この廃校は数十年前に子どもの減少から廃校になった中学校で、今は世界革命団の第一アジトになっているらしい。
廃校なのに中はやはり人がいるからか意外と綺麗である。


「あれ?劇団員いなくない?」
「今日は火曜日ですよ。火曜は来れないと言っていたでしょう」
「おい起きろ変態教師」
「いだっ!?」


職員室とおもしき部屋に入った凌央が椅子に座ったまま寝ている男性を蹴り起こした。
男性は今時珍しい丸メガネをかけており、両目の下にはバーコードが彫られている。
彼は落ちた拍子に転げ落ちたメガネを拾ってかけると、AFに気づいてガン見し始めた。そしてすぐに彼の左目の機械の中、つまり左目の眼球に輝石があるのを見抜いた。
水色の髪をしたその男性は蹴り起こした凌央に一喝すると、一行を引き連れて教室に向かう。
『2-D』と書かれたその教室には机が10個、教卓と黒板がきちんとある。
AFは机を興味深そうに見ながら勇気に手伝ってもらい椅子に座る。だが身長が小さいからか、机の位置が首らへんだし、椅子も足が完全に浮いている。
その様子を見てレイがぷるぷると悶え震えている。
「そこの風紀さん静かにね」と男性がレイを指摘する。しかし彼女は相変わらず震えている。


「えーっと、まずAFさんは初めてということなんでとりあえず私の自己紹介から始めますね……はぁ」
「オイこら変態教師。溜息つくな」
「はいはい。えー、私は一応皆さんの『保護者』である不知火邦彦です。因みにこのカメレオンの親戚でもあります」


親戚という言葉にAFは驚いてポカーンとあんぐり口を開けていた。
よくよく見ればどことなく凌央に似ている。目つきと、縫われた口。だが性格は全く違うために親戚と言われなければ分からないだろう。
それに加え彼には【不知火(しらぬい)】という言葉が引っかかったが記憶がないためにうやむやになってしまったが。
その間にも凌央と邦彦が(凌央が一方的に)いがみ合いをしている。
あわあわと彼がどうしようかと焦っていると、勇気が気にしなくていいと笑いながら言ってきた。
どうやらこれは毎回のことのようで凌央と邦彦以外は既にまたか、と言わんばかりの表情で見ている。
葉栗姉弟が止めに入るまで親戚同士の戦いは終わらなかった。


「えー、では今日は数学から始めたいと思います」
「「「えー」」」
「ブーイングした子達に当てることにしましょうか」
「「「すみませんでした」」」


ブーイングをかましたレイとレオと勇気は即座に謝った。
AF自身も、数学もとい理数系はできれば関わりたくないぐらいに嫌いである。
すると邦彦はAFにだけとある紙を渡してきた。
彼の見た目が小学生なために、とても簡単な『小学生レベル』の問題用紙を渡してきた。
それを見た凌央は持ってきていた筆記用具からハサミを取り出し、邦彦の頭めがけてそれを投げた。
そのハサミは綺麗に邦彦の頭に刺さり、そこからブシャーッと出血し始めた。だがさすがは蛇人間、普通では死ぬところなのだが簡単には死なない。


「おっさん、AFは高校生だ。あとIQもかなり高いぞ」
「……そうなのですか?」
「……IQとかは覚えてない、けど……僕、多分高校生……」


AFも曖昧ながら言うと邦彦は謝ると教科書を渡した。ちゃんと高校生用の教科書だ。
凌央以外の全員が高校生の年代のようで、ちゃんとテストとかもある。
今日はAFが新入生として入ってきたため、実力テストを行うことになった。
僅か30分で国語、数学、理科、社会、英語の五教科を行うというなんとも鬼畜すぎるテストだ。
みんな集中してテストに取り組む。チッチッと針の音が響く。
30分後、タイマーの音によりその静寂は打ち切られ、またガヤガヤと騒がしくなる。
邦彦が採点している間に、レイたちはおしゃべりで埋めていた。


「おーいお前ら、採点終わったぞー」
「不知火センセー誰が一番!?」
「……あー、風紀は黙って。一番はAFだ」


自分の名前が呼ばれて、俯いていたAFが顔を上げた。
彼が顔を上げると他のみんなが自分を見ている。なんで見ているのかわからないAFはキョロキョロとみんなを見つめる。
するとレイとレオが自分の席から立ち上がりAFを褒め始めた。
状況がイマイチ分かっていないために彼は凌央に助けを求める。凌央は葉栗姉弟を引き剥がして席に戻す。
結果は一位はAFと同位の凌央、二位は結子、三位はレオ、四位は同位でレイと勇気。


「AFすごい、凌央兄と同じなんて!」
「すごいですね。満点ですか……私には当分無理な点数ですね」
「勇気は文系がだめだめだもんね、しょうがないよ」
「うるさいです風紀バカ」
「風紀バカ!?」


その時、ピロリン、と凌央の携帯にメールが入った。
そのメールを一同はのぞき見た。



『To.崎守あきら



青子ちゃん達と隔離病棟にいます
反革命派テロリストと遭遇してます、助けてください』